生前対策
所有している財産の多寡に関わらず、生前に相続に関しての対策しておくことはとても重要です。
相続争いの原因は主に、「故人の意思が残されていない」ことにあります。生前に対策をし、自分の意思を残しておくことで、自分が去った後に起こるかもしれなかったご遺族による相続争いを未然に防ぐことができます。
相続争いによってご遺族の家族関係が壊れてしまわない様に、今のうちにしっかり対策を行いましょう。
ここでは遺言書の作成、生前贈与など生前対策の進め方について記載していきます。
遺言書の作成
遺言書の必要性
遺言書が残されなかった場合、遺産分割は、民法の規定により、相続人となる法定相続人の間で行われ、その対象外の方々には一切の遺産が配分されません。遺言書を作成し遺産分割の指定をしておくことで、相続に故人の遺志を反映させることができます。
下記のような方は、特に遺言書の作成をお勧めいたします。
- 夫婦の間に子供がいない場合
- 先妻、後妻の間に子供がいる場合
- 遺産のすべてを配偶者に残したいの場合
- 離婚訴訟中の配偶者に相続をさせたくない場合
- 個人事業主の事業承継の場合
- 内縁関係(事実婚)の場合
- 法定相続人が誰もいない場合
遺言書を作成するメリット
遺言書を作成しておくことのメリットは、まず遺言書に遺産の分割について明確に記載しておくことにより遺産分割協議が不要となり、遺産相続争いを未然に防ぐことができます。
次に内縁の妻など法定相続人以外にに遺産を分け与えたい場合には、遺言書での意思表示が必要となります。
遺言書を利用することで、通常では相続人になりえない人物にも財産を譲り渡すことができます。
また、遺言書に遺産の全てを記載しておくことで、金融機関などの手続きもスムーズに行うことができ、遺族の負担を大幅に軽減する事ができます。
遺言書の種類
一般的な遺言には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。
- 1.自筆証書遺言
- 本人が手書きで作成する遺言書の事を指します。
日付・署名・押印が必要であり、ワープロ書きや代筆は無効となります。
費用をかけず、簡単に作成することができ、遺言がある事自体を秘密にする事ができますが、ルールに沿った記載をしておかないと無効になる可能性があります。
また、開封には家庭裁判所での検認が必要です。 - 2.公正証書遺言
- 公証人に内容を伝え、作成してもらった遺言書の事を指します。
証人が2名以上必要になりますが、専門家に作成してもらうため無効になる可能性が低く、家庭裁判所での検認も不要です。
また、原本は公証人役場に保管されるため、紛失しても再発行が可能です。 - 3.秘密証書遺言
- 本人が作成した遺言書の存在のみを公証人に証明してもらう遺言書の事を指します。
遺言の内容自体を秘密にできますが、開封には家庭裁判所での検認が必要であり、証人が2名以上必要です。
また、ルールに沿った記載をしておかないと無効になる可能性があります。
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
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作成者 | 本人(手書き) | 公証人 | 本人(代筆可) |
証人 | 不要 | 2人以上 | 2人+公証人 |
保管 | 本人 | 公証人役場 | 本人 |
家庭裁判所の検認 | 必要 | 必要 | 必要 |
特徴 |
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生前贈与
生前贈与とは、自分の財産を死亡する前に、自分が相続させたい人に贈与することを指します。いわば生前に遺産相続を行うという意味合いになります。
生前贈与は自分で自由に財産を処分できるので、亡くなった後に相続争いがおこる心配がなくなる事もメリットですが、相続税の軽減に役立てる事も可能です。
生前贈与を上手に活用して、節税対策にも役立てましょう。
生前贈与のメリット
連年贈与
贈与税は、生前贈与による相続税逃れを防止するために設定された意味合いもあり、基本的には相続税よりも贈与税の方が負担額が高くなっています。
しかし、贈与税がかからない基礎控除は110万円であるため、110万円までなら非課税となります。
また、贈与税は贈与を受けた人がが支払うので、相続人が複数いるときは1年間に[相続人×110万円]の財産を移動していけばよいのです。
この様に、毎年将来の相続人などに贈与していくことを「連年贈与」といいます。
居住用不動産の贈与の特例
不動産の贈与については、夫婦間における居住用不動産の贈与の特例というものがあり、婚姻期間が20年以上の夫婦間での居住用不動産の贈与は基礎控除の110万円の他に、2,000万円まで控除が受けられるという制度です。
適用要件は以下になります。
- 婚姻期間が20年以上が20年を経過している
- 配偶者から贈与された財産が、住居用不動産を取得するための資金であること
- 贈与を受けた年の翌年3月15日まで居住し、その後も引き続き住み続ける見込みであること